読書メモ『FACT FULNESS』

・人はいつも、何も考えずに物事をパターン化し、それをすべてに当てはめてしまうもの。しかも無意識で。偏見があるとか、意識が高いか低いか、そういうことは関係ない。

 人が生きていく上で、パターン化は欠かせない。それが思考の枠組みになるからだ。どんな物事も、どんな状況も、すべてをまったく新しいものとして捉えていたら、自分の周りの世界を言葉で伝えられてしまう。

 

・世界の大半の人たちの生活レベルは、着実に上がっている。レベル3(1日の収入が16ドル)の人口は、いまの20億人から2040年には40億人に増える。これは、世界中のほぼすべての人が消費者になりつつあること。

 間違ったイメージにとらわれて、世界のほとんどの人は貧しすぎて何も買えないと思い込んでいたら、史上最大のビジネスチャンスを見逃してしまう。事業戦略に必要なのは、事実を基に世界を見つめ、そこから未来のユーザーを見つけること。

 

 

 

・額にしるしをつけて、ヤシの木の下で暮らしている学生が、はるかに知識豊富なことがある。その国の教科書は私の教科書よりも3倍も分厚く、その学生が私よりも3倍もその教科書を読みこんでいたのだ。

 育った場所のおかげで自分のほうが優れているという思い込みが、人にはある。自分の国は進んでいて、途上国が追いつけないのは、大きな勘違いなのだ。

 

・私たちがニュースでよく見かけるのはレベル4(1日32ドル)の日常生活で、逆に危機の映像はレベル4以外のものばかりだ。「トイレ」「ベッド」など日常的なものをググってみても、レベル4の写真しか出てこない。ほかのレベルの暮らしぶりを見たくても、グーグルは役に立たない。

 ドルストリートというサイトで、色々な国の色々なレベルの人の様々な写真が載っている。固定観念にとらわれないように見てみること。

 

・よく使ってしまう分類を、常に見直し続けるために、

 同じ集団の中の違いと、違う集団のあいだの共通点を探すこと

 「過半数」に気を付けること

 例外に気づくこと

 自分が「普通」だと決めつけないこと

 ひとつのグループに当てはめていないか振り返ること

 が役立つ。

 

・人間は昔から、あまり変化のない環境で暮らすことを選んできた。違う環境に次々と自分を合わせるよりも、同じ環境に慣れ、それが続くと考えるほうが生き残りに適していたから。

 また集団が特別な宿命を持っていると訴えれば団結しやすく、ほかの集団に対して優越感を感じられる。だから、種族や部族、国家、帝国の力を強めるためにはそれが役立った。でも、いまの時代、物事が変わらないと思い込み、新しい知識を取り入れることを拒めば、社会の劇的な変化が見えなくなってしまう。

 

 

 

・人間の身体の中で、いちばん大きな部分を占めるのは皮膚だ。近代医学が発達する前、最悪の皮膚病は梅毒だった。痛痒い水膨れから始まって、ただれが骨まで届き、骨が見えてしまう。気味の悪い見た目と、耐えられないほどの痛みを引き起こすこの病気は、国によって呼び名が違っていた。ロシアではポーランド病、ポーランドではドイツ病と呼ばれた。ドイツではフランス病、フランスではイタリア病、イタリアでは、フランス病と呼んでいた。

 誰かに罪を着せたいという本能は、人間によほど深く根付いているようだ。原因不明の痛みをスウェーデン人がスウェーデン病と呼ぶなんて考えられないし、ロシア人がロシア病と呼ぶこともない。それが人間というもの。私たちは他人を責めたがるし、この病気を持ったガイジンがひとりでもやってきたら、出身国全体に喜んで罪をなすりつける。これにて一件落着にしたいからだ。

 

・焦り本能

 いつやるか?

 いまでしょ!

 いますぐやろう!

 明日なんて遅すぎる!

 ここまでたどり着いたから、ここでやらなければあとはない。それとも何もしないのか。選べるのはいま、この時だ。このチャンスを逃すと次はない。

 だから、いま、この瞬間に決めるんだ! 今日から生き方を変えよう! いますぐ行動しよう!

 こんな言葉が溢れている。この手の言い回しはよく使われる。今やらないと、もう次はない、それが焦り本能を引き出すコツ。いますぐ決めろとせかされると、批判的に考える力が失われて、拙速に判断し行動してしまう。

 そうならないために、一息つくこと。口車に乗らないように。

 今じゃないとダメなんてことはない。

 チャンスは一度きりではない。

 後回しにしても大丈夫。ほかに別のことをしても全然大丈夫。

 1週間後でも、1か月後でも、1年後でも、また行動すればいい。もう一度おさらいできると思えたらいい。それでも遅くないし、逆にそうしたほうが、一度に詰め込むより身に付きやすいこともある。